代表・庭野の付焼き刃オランダ語講座〜Takayuki Niwano 2nd solo album "Elektricity"曲目解説(主に曲名の説明)&制作ノート




いよいよ9月3日に発売するCDリリース第5弾となる代表・庭野のソロアルバム「Elektricity」の曲目について少し解説を書いておきたいと思います。今回のアルバムのテーマは「電気」です。しかしこれはあくまで後付けであり、なんとなく制作時に興味を抱いていたことと作品を結びつけることでコンセプチュアルな雰囲気が出るだろうという目論見があってのことです。そのテーマのせいで必然的にオランダ語を多用せざるを得ない状況になりました。ということで題名の意味くらいは説明しておいた方が良いだろうということで早速ですが1曲目から参ります!制作ノートは下の方に手短に書いておきます。

01.Elektriciteit(エレクトリセタイト)
オランダ語で電気と言う意味の語句です。平賀源内が日本で制作したエレキテルの語源(源内による発音-ゐれきせゑりてい)らしいです。
今回のアルバムの曲名は江戸時代にオランダから伝来した「ボイスの百科事典」の中の語句、特に電気の項目で解説されている単語、そしてエレキテルにまつわる語句を使っています。ボイスさんはその時代のオランダの偉い学者さんだそうで、そのボイスさんが書き上げた百科事典を基にその後のエレキテル設計図が書かれたとのことです。
今回なぜこのようなテーマをタイトルなどに用いたかというと、電子音楽というよりも電気音楽であることを意識して作ったからです。それはあの震災やあの原発問題も影響しているでしょう。偶然か必然か、同時に平賀源内とエレキテルに興味が湧き、それらと音がたまたまうまく噛み合ったというのが正直なところです。
この曲は、エレキテルがもしも未来の音楽を受信できるジュークボックスだったらなんていう想像をしながら聴くと良いかもしれません、受信しながらもノイズが混じりバグが生じるといったアクシデントを平賀源内が絶妙にチューニングしながら聴衆に披露しているといったイメージです。もちろん後付けです。。
02.Natuur(ナチュール)
オランダ語で自然を意味する語句。電気が起こるのも自然現象の一つで、電気の項目の中で自然学(Natuur Kundige)という言葉が出てきます。クンデは語呂が悪いなあと思ってナチュールだけにしました。
コーラス風のフレーズに電気パルスが走り、アンビエンスが広がる感じでポスト(ロック的)・ドローンと勝手に位置付けしてみるのも悪くないと思われます。
03.Mars
04.Venus
この2つは英語です。火星と金星を表すこの2つの語句は平賀源内のエレキテルの外箱の両脇に記されています。おそらくそれぞれオスとメスを表すところから+極と−極をオシャレに表現したのではないかと想像できます。実際、それ以後の発展形エレキテルは実用的で木箱もそのまま木目なのですが、平賀源内のエレキテルは外箱が見事にデザインされており、当時の見世物的な風合いが強く感じられるものになっています。
曲名通り前者は荒々しく、後者は品やかな雰囲気のサウンドです。
05.Tril
これはエレキテルや電気とは関係ありません、ですがこのTrillと最初のElektriciteit、最後のCitizenlはちょっとした言葉遊びになっていまして、アルバムタイトルのElektricityをElek(riciteit)+Tri(ll)+Cit[y](izen)に分けて3曲を関連づけているのです。何故関連づけたかというと、これらは同じプロットというか同じ音色、和音を基本にバリエーションを付けているからです。この曲は1曲目の和音それぞれとベースのタイミング(アタック感も違う)がずれていて(後半さらにずれていきます)段々と鳥のさえずり(トリル)に聞こえなくもないのではないかと思われます。
06.Buys(ボイス)
英語に見えますが、オランダ語です。先ほど登場したオランダの学者・ボイスさんの名前を拝借しました。
ストリングスのアルペジオが段々おかしくなっていく感じや、それに被さるエレクトロニックノイズが学者のちょっとストレンジな雰囲気を醸し出しているのでなんとなくマッチしてるのではないかと思います。
07.Effluvia(イフルビア)
電気そのものの視覚認識が難しいことでその力を具体的に説明する為に電気が生まれる源をこの言葉で表したということらしいのですが、果たしてこの説明で合っているのか確信を持てずにいます。語感が素晴らしいですよね。西欧人のセンスを感じます。ベタ褒めすることでお茶を濁しております。その霊的でもある根源の音がハウリングのようにヒリヒリと鳴り響いております。インダストリアル風ですが金属的なドラミングなどは入っておりません。
08.Brandsteenkracht(ブランドスティンクラフト)
これは電気の語源らしいです。Elektriciteitの別の言い方です。これも語感が素晴らしいですね。少しドイツ語っぽい感じもあってヨーロッパを感じます。四つ打ちになりそうでならない(ビートが崩れる、というかキックに聴こえる音はベースを低くした音です)感じや様々な音が飛び交う感じが曲名とマッチしていると思います。
09.Citizen
最後のこれは先ほど説明したとおりです。1曲目とそっくりなのはそのせいなのです。少し音程を低めにダブ処理し、重めの低周波などでさらに深みを出しております。実は全体のコンセプトとして、(ダンス)ビートらしいビートを控えるいう約束があったのですが、それでも多少ドイツ辺りのミニマルダブの雰囲気が出ているのではないかと思います。

さて、そのアルバムの制作方法についてですが、基本は前作の方法を踏襲しています(ランダムに変調するエフェクトフィルターを使った制御不能なダブエレクトロニック)。作り方はいくつか制限しました。まずデータの整理中に見つけた、何年か前に何かのテストで打ち込んだ(正直目的が定かでないし記憶に無いものですが)かなり単純なシーケンス(全音符が小節の頭にポツポツと打ってあってたまにそれがずれていて意図的にミニマルなリズムを崩している感がある)のみを(複数)使用して作曲する。プロツールズ付属の音源のみで作る(あらゆるプラグインソフトなどにあまり魅力を感じていなかった/ただしエフェクトに前回もサウンド全体の要になったGuitarRigというシミュレータを使用)。ハウス以降のダンスビートの使用を控える。といったものです。ですがこれらも制作前から決めていたわけではなく、作っているうちに見えて来たものです。実際最初は四つ打ちのビートをあれこれ弄ってみたり、サンプリングや過去の音源などを使って作曲してみたりしました。ですがそれら(6曲くらい)は全てボツになり、今回の9曲に至ったわけです。昨今の僕にとっての作曲とは、頭の中にある音響を制限によってたぐり寄せフィルタリングによって突き放すという作業の繰り返しです。今作はその特徴がかなり強くあらわれた作品になりました。これは、既存の音楽というものをあまり系統立てもせず、気の向くままに聴きかじり、雑多に影響を受けて来た僕が導き出した最良の方法論なのです。
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Web only & Free download EP(アルバム先行EP)
Elektricity EP (no mastering)
https://soundcloud.com/kawagoenew/sets/takayuki-niwano-elektricity-ep